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seirojin


聖老人

神秘の森で

世界最古の老人と出会った

彼は 一言も 語ることは なく

私たちも 彼の前では 語る言葉が みつからない

言葉で表現しよう 伝えよう と思えば 思うほど

頭の中で 言葉の糸がもつれ 絡み合ってしまった

推定樹齢7200年といわれている 聖老人

私が彼のことを語るには まだ

1000年程 若すぎるような気がした

  
 


   聖老人

   あなたは この地上に生を受けて以来 ただのひとことも語らず

   ただの一歩も動かず そこに立っておられた

   それは苦行神シヴァの千年至福の瞑想の姿に似ていながら

   苦行とも至福ともかかわりのないものとしてそこにあった

   ただ そこにあるだけであった

   あなたの体には幾十本もの他の樹木が生い繁り

   あなたを大地とみなしているが

   あなたはそれを自然の出来事として眺めている

   あなたのごわごわとした肌に耳をつけ

   せめて生命の液の流れる音を聴こうとするが

   あなたはただそこにあるだけ

   無言で 一切を語らない


   聖老人

   わたくしは あなたに尋ねたかった

   けれども あなたはただそこに静かな喜びとしてあるだけ

   無言で一切のことを語らなかった

   わたくしが知ったのは

   あなたがそこにあり そして生きている ということだけだった

   そこにあり 生きているということ

   生きているということ

   聖老人

   あなたの足元の大地から 幾すじもの清らかな水が泌み出していました

   それはあなたの 唯一の現わされた心のようでありました

   その水を両手ですくい わたくしは聖なるものとして飲みました

   <1978年11月発行月刊『Life Science』(生命科学振興会)に発表>
山尾三省著「聖老人 百姓・詩人・信仰者として」 より



なんども なんども 読み返す

絡まりあった 言葉の糸が 一本のまっすぐな糸になった。
by Kailani073 | 2005-05-16 00:31 | 未分類
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